COLUMN
in JAPAN
海洋ごみの削減を重要なテーマとして活動しているスポGOMI。 とはいえ、そもそもなぜ「海洋ごみ」なのでしょうか。ごみ問題と聞くとまちのポイ捨てや家庭ごみの分別など、陸上での課題を思い浮かべるかたが多いかもしれません。けれど実際には、海に漂うごみの約8割が陸から流れ出たものだとされています。(※1)つまり、海洋ごみは私たちの生活の延長線上にある問題なのです。 この記事では、海洋ごみの現状とプラスチックごみの影響、そして世界の対応と日本の独自の方針を比較しながら、「捨てることを前提としない社会」への転換について考えてみたいと思います。
私たちの生活に欠かせないほど便利で多方面で活用されているプラスチックは、とても身近な存在といえます。プラスチックは、ペットボトルのように見るからにわかりやすいものだけでなく、家電、衣料品、食品容器や建築資材、自動車部品などにも利用されているのです。
便利で身近な背景に「使い捨て」されやすい傾向があります。そうすると資源として再利用されることもなく、河川を経由してやがてその大半が海洋へと流れつくことになります。
つまり海洋ごみの約8割が、海からではなくそうして陸から流れついているという事実があり、この事実は、改めて私たちの生活の延長線上に海洋汚染があることを示していると言えないでしょうか。
とりわけプラスチックごみは、自然分解に長い時間がかかり、海洋や陸上の環境を汚染するだけでなく、焼却時には温室効果ガスを発生させます。さらに、マイクロプラスチックによる誤飲など、生態系への影響も深刻で、最終的には人体への影響も懸念されているという、きわめて深刻な課題のひとつとなっています。
こうした背景から、世界では「脱プラスチック」の動きが加速しています。 EUでは使い捨てプラスチック製品の流通を禁止し、プラスチックボトルの回収率やリサイクル材料の使用率に明確な数値目標を設定しています。フランスでは2040年までにすべての使い捨てプラスチック包装をなくす方針を掲げ、すでに野菜や果物の包装は禁止されています。アメリカでは州ごとに対応が異なりますが、国としてリサイクル率50%を目指す国家戦略が発表され、企業や大学による技術開発も進んでいます。(※2)
一方、日本の方針は少し異なります。 2022年に施行された「プラスチック資源循環促進法」は、プラスチックを規制するのではなく、資源として循環させることを目的としています。設計から製造、販売、回収、リサイクルまでの全体プロセスにおいて、事業者・自治体・消費者が連携しながら、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の構築を目指しています。基本原則は「3R+Renewable」、つまり、減らす(Reduce)、繰り返し使う(Reuse)、再利用する(Recycle)、そして再生可能な資源に置き換える(Renewable)という考え方です。 (※3)
この方針は、「捨てることを前提としない経済活動」への転換を促すものであり、単なる規制とは異なるアプローチです。 ごみを拾うことは、海に流れつく前にその行方を変える行為でもあります。スポGOMIのような活動が、個人の行動と社会の制度設計をつなぐ接点となることで、プラスチックを“資源”として扱う視点が、未来の海を守る鍵になると考えられるのではないでしょうか。
(※1)WWF「海洋プラスチック問題について」
(※2)出典:EU公式サイト、Waste360、EPA公式発表
(※3)環境省公式サイト「プラスチック資源循環法関連」