INTERVIEW
BIN QUTAB財団とスポGOMIが出逢い、ムーブメントを加速する
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いよいよ来月に迫ったスポGOMIワールドカップ2025 FINAL。世界各国から多様な “スポGOMI アスリート”たちが集結します。各国代表を決する予選大会で垣間見えたのは、それぞれの国と地域が抱えるごみ問題をはじめとする環境課題の現実でした。 スポGOMIのシンプルな “スポーツごみ拾い” というアクションを通じて、環境への意識を高める輪が着実に広がりを見せています。 今回インタビューに答えてくれたのは、パキスタンの大会オーガナイザーであるBIN QUTAB財団の創立者でありチェアマンの Bashir Malik さん。 BIN QUTAB財団では、これまで医療や教育、生活支援を通じて社会課題に取り組んできました。近年では環境問題にも力を入れており、スポGOMIとの出会いをきっかけに、さらに国内での活動を広げているそう。 BIN QUTAB財団がスポGOMIとどのように関わり、パキスタンのごみ問題にどう向き合っているのかをご紹介します。
― まずBIN QUTAB財団の歩みについてお聞かせください。
私たちのBIN QUTAB財団は、2007年に設立された非営利団体です。パキスタンの農村部や都市スラムに暮らす人々に向けて、医療・教育・生活基盤の支援を行ってきました。最初のプロジェクトは、パンジャブ州ジャグワルという農村地域に病院を建設することでした。開発途上国の農村部で大規模な医療施設を運営することは非常に困難ですが、BIN QUTAB財団は15年以上かけてこの挑戦を実現させることができたのです。

(「医療・教育・生活基盤の支援を行ってきた」と語るBIN QUTAB財団の Malik代表)
この病院には透析ユニット、手術室、眼科・歯科、薬局、ラボ、医療教育カレッジが併設されており、70km圏内の住民に医療を提供しています。これまでに100万人以上がこの病院のサービスを受けてきました。また、山岳地域の住民にも医療を届けるため、移動式病院を運営しています。清潔な水の供給や障がい者支援、病気の早期診断にも力を入れており、チャクワル地区では35,000人以上の障がい者に対して車椅子の提供や医療支援を行っています。今後は中東、欧米、東南アジアへの活動拡大も計画しています。
― 医療支援から拡充されていったのですね。ではスポGOMIはどういうきっかけで始まったのでしょうか。
もとより私は幼少期から「清潔さ」を生活の基本と考え、日常的にごみ拾いを続けてきたという経緯があります。自宅や駐車場、公園などでごみを見かければ拾う。それが「ふつうであるべきだ」という信念を持っており、私がごみを拾う姿はメッセージとなり、それを見た人も次にはごみを拾っていたりします。こうした行動が少しずつ周囲の人々にも影響を与え、小さな意識の連鎖を生み出しているのだと思います。
そうした日々にあって、私が日本発のスポGOMIを知ったのは、バンコクでの活動を紹介する新聞記事がきっかけでした。それからすぐにスタッフに調査を依頼し、活動の可能性を探っていったのです。次第に、個人の行動が組織的な運動へと広がる可能性に感動し、パキスタン全土へのスポGOMI展開を決意したというわけです。

(BIN QUTAB財団は15年以上かけて開発途上国の農村部に大規模医療施設の開設を進めてきた)

BIN QUTAB財団が運営する医療費が無料の病院のひとつ)
現在では都市部だけでなく農村部でも、地域住民を巻き込んだごみ拾い活動が広まるほどみんなの意識が高まっていることを実感していますよ。スポGOMIの仕組みを参考にしながら、楽しみながら参加できるかたちでの環境活動が広がりつつあります。
― BIN QUTAB財団の理念と共鳴したのですね。スポGOMIを今後どのように活かしていきたいですか。
そうですね。私たちは「環境問題は食糧問題以上に重要」と考えています。なぜなら、環境が破壊されれば食べ物があったとしても健康を守ることが難しくなるのです。特に深刻なのは気候変動で、これは現在だけでなく未来世代にも深刻な影響を与える問題ですから、各国政府が真剣に取り組むべき課題であると考えています。

(「スポGOMIの可能性に感動しパキスタン全土へと展開を決めた」)
スポGOMIのような活動は、ごみ拾いを単なる作業にとどまらず、「楽しみながら参加できる社会運動」へと変えていくことができます。BIN QUTAB財団はこのムーブメントを通じて、より多くの人々が環境問題に関心を持ち、行動に移すことを願っています。
ー 生き物や地球に有害な汚染物質による健康への影響は確かに「待ったなし」です。最後にパキスタンでのスポGOMI展開や財団のこれからについて教えてください。
BIN QUTAB財団が長らく注力している医療や教育といった社会的支援に加え、環境保護というグローバルな課題の両輪を回していくことによって未来へとつながる道を切り拓いています。スポGOMIから始まった小さな行動が国境を越え、持続可能な社会への一歩となっていくことを力強く目指しています。
そしてこの挑戦は、静かに、しかし確実な広がりを見せているのです。